『人形の家』は、初見ではなく、前に他の劇団でやったものも観ていたので、予備知識はありました。
けっこう、好きな作品だし。
最初、はじまって、2幕の休憩が終わるときまでの印象は、
「なんか、みんな思いきり芝居するな~」
でした。
宮沢りえが、表情をつくって芝居するのが、すごくダメで、なんか大竹しのぶっぽいと思いました(笑)
でも、役の考えてる目的だとか、行動とか、すごく明確で、分かりやすい。
これは、演出家が、うまいんだけど。
的確に、意味を伝えてくる。
でも、それをちゃんと表現できる、勘の良い役者をそろえてあるとこも、勝因だな。
役者さんも、皆、すごく達者で、堤さんも、りえちゃんも、すごく役とあっていたと思う。
後半とのギャップを考えて、前半の芝居をつくってあるんだろうけど、最初が嘘っぽくて、なんか信じられなかった。
なので、ノラが、自殺を考えるほど、深刻に謝金の事を受け止めているというのが、よくわからなかったな。
ヘルメルに対して、嘘をつきつづける根本的理由がいまひとつわからなかった。
これは、もしかしたら、イプセンの時代と今の時代の違いかもしれないし、だとしたら、ルヴォーが現代劇としてこの作品を上演した事の弊害かもしれない。
いや、現代劇として上演してるから、確かに面白いのだけれど。
これだけの古典作品を、楽しく見せる手腕はすごいと思う

確かに、寝てる観客がいないってのは、すごいでしょ、古典劇で。
初日頃に観た友人は、「一幕ちょっと眠かった」って言ってたので、続ける事によって、役者が上達したのかもしれないけど。
最初、早いなあと思ったテンポも、だんだんと心地よく感じたし。
山崎一さん演じる、クロクスタ登場のあたりから、ちょっと面白くなった。
ただ、私の座ってる位置が、ちょうど、クロクスタの裏になるとこで、山崎さんの表情がみえなくて、残念。
その分、りえちゃんの表情で山崎さんの感情を見るんだけど、
ノラが「子供がいるんです。子供の事も考えて下さい」と言うと
クロクスタが「じゃあ、私の子供の事は考えてくれたんですか!」と言われた後の、りえちゃんの、愕然とした表情!
ここから、宮沢りえ=ノラ・ヘルメルに、どんどん惹かれていきました

ただ、どうしても、りえちゃんと、堤さんのキスシーンで、りえちゃんが、夫婦役だからキスするのも平気でーすって頑張ってるように思えて、だったら、千葉さんとのキスシーンも平気なように見えて、本当だったら、ノラがどきどきしてたりするのだろうけど、そのあたりが、役者の肉体を透けて見えてこなくて残念だった。
ああ、そういう解釈ねってのがあるのに、形で表現しちゃってて、もったいない。
そういう意味でいうと、堤さんの最後とかも、もったいない。
どうなのよ、どうなのよ、そこまで言われたら、どうなのさ!!
と、こっちは、興味津々で観てる訳だから、そこは、堤さんの人生を通した、生のヘルメルの感情が見たいのよね~~~~

山崎さんと、神野さんのシーンは、本物の感情があったように思う。
相変わらず、(四方向から観える舞台で、しかも回転もするセットなのに)なぜか、いつも裏しか見えない山崎さん(笑)
でも、その背中やら、相手役の神野さんの表情で、なんか言葉にならない事がすっごい伝わってきて、せつなかった。
クロクスタが手紙を返してくる理由も、わかったし。
ここって、こんな印象的なシーンだったんだなあって初めて思った。
ちょっと、肩より大きいコートとか、薄汚れた靴っていうのも哀しかった。
(計算された衣装なのかな?それに比べて、最後のりえちゃんのスカートから、下の下着(レオタード?)の線がバリバリ見えてるのは、なんとかして欲しかった…いいとこなのに…)
ラストの、りえちゃんの長台詞は、素晴らしかった。
とても意味がよくわかりました。
(言葉としての意味でなく、感情として)
急速に、相手に対して、気持ちがすーっと引いていく瞬間って、私も経験した事があるけど、それがよく伝わってきた。
台詞だけじゃなく、考えとして、よく伝わってきたなあ。
面白かった。
これをこの劇場に来てる男性はどう思って聞いてるのかな?と客席を見渡してみたら、けっこう男性客が多くて、お!と思った。
私は、演劇というものは、考える材料を与える場所(人間に考えるという事をさせる場所)という考えを持つ人間なので、こういう作品をどんどんやればいいのにって思う。
チェーホフは、(「芝居の中に人生の教訓をみつけるのはくだらない」っていうけど)
千葉さんのドクターも、効果的で、人間関係が、リアルで面白かった。
最後は、泣けた。
カーテンコールで、りえちゃんが、黒いTシャツと、白いパンツで出てきたのが、すごい感動的だった。
「あ、仮面をはずした!!」
って思った。
やっぱり、お芝居をしてる姿は、面白くないです。
仮面をはずして、疲れきって、本当に、ただの人になってたりえちゃんが、本当に素敵でした。
力をだしきったんだなあって…
ちょっと、藤原達也に似てた。
本当に、お芝居っていいなあって、そのカーテンコールのりえちゃんを見て思いました。
なんか、うまく言えないけど。
私も、頑張ろうと思った。
芝居に全身全霊をささげようと思いました。
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人間が、ただの人間として、舞台の上に存在する事。
そして、人間と交流できる事。
それが、芝居の原点なのかな…と思います。
ドキッとする瞬間を舞台の上でいっぱい作り出せるように、頑張っていきたいと思います。
コメントありがとうございました。